窒素の量
ナイトロックスに含まれる窒素の量は、空気のそれよりも少ないので、空気を利用したダイビングに比べて利点があります。
同一の潜水深度では、ダイビング中に体内に溶け込む窒素の量は空気の時よりも少なくなるので、無減圧潜水可能時間が長くなり減圧症に関してより安全なダイビングを行うことができます。
また、窒素酔いが軽減されると思われるかもしれませんが、高濃度酸素ガスには麻酔効果があるため、実際には窒素酔いと同様の症状がおこる可能性があります。
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体内に溶け込む窒素量の違い |
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酸素の量
ナイトロックスに含まれる酸素の量は、空気のそれよりも多いので、同じ呼吸で比較した場合、一度の呼吸でより多くの酸素を体内に取り入れることができます。
これにより、ナイトロックスのほうが空気に比べて呼吸が楽に感じるため、ダイビング中の呼吸ガス消費量が減少します。
しかし、酸素中毒に関しては空気潜水よりも注意が必要となります。 |
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■酸素分圧
呼吸ガスに含まれている酸素や窒素のそれぞれの圧力を分圧と呼びます。
陸上では1気圧の空気を呼吸して生活しています。
この場合、空気中の酸素の分圧は0.21気圧で、窒素の分圧は0.78気圧です。
水深10mのダイバーは2気圧の気体を呼吸してダイビングしています。
空気を呼吸している場合、呼吸ガス中の酸素の分圧は0.42気圧で、窒素の分圧は1.56気圧です。
一方、EAN32は酸素比率が32%のナイトロックスですので、これを陸上で呼吸するとナイトロックス中の酸素の分圧は0.32気圧で、窒素の分圧は0.68気圧です。
また、水深10mのダイバーがEAN32を呼吸している場合、呼吸ガス中の酸素の分圧は0.64気圧で、窒素の分圧は1.36気圧です。
このように、ナイトロックスを使用した場合には、ダイビング中の呼吸ガスの酸素の分圧が通常の空気よりも高くなります。
酸素分圧は以下の計算式により求めることができます。
酸素分圧=ナイトロックスの酸素比率 ×(潜水深度 ÷10+1)
例えば、EAN32を使用して水深20mに潜水する場合には、EAN32の酸素比率は0.32ですから、上の式を利用すると、
酸素分圧=0.32 ×(20÷10+1)=0.96 となります。
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 呼吸ガス酸素濃度の違い |
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■酸素中毒
レジャーダイビングにより問題となる酸素中毒は、中枢神経系酸素中毒です。
体内への酸素の吸収量が規定レベルを超えるような深い深度や長時間のダイビング、体内に二酸化炭素が蓄積されやすい激しい運動をともなうダイビングや低水温でのダイビングをしてはいけません。 |

激しい運動は× |
またレギュレーターの呼吸抵抗が大きく呼吸しにくい場合や、浅くて速い呼吸をした場合にも十分な換気を行うことができませんので、酸素中毒のリスクが増加します。
酸素中毒になると、ケイレンがおこり、レギュレーターをくわえていることができなくなります。
めまい、視覚障害(視野が狭くなる)、まぶたや唇のぴくつきやひきつり、吐き気、頭痛などの症状があらわれたら、酸素中毒の兆候と考えられます。すみやかにダイビングを中止してください。 |
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めまい、頭痛に注意 |
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